緑内障とは
緑内障は、眼圧などの影響によって視神経が障害され、視野が狭くなる病気です。
ほとんどの緑内障は緩やかに進行するため、症状に気づかないケースが少なくありません。40歳以上の20人に1人が緑内障であるとの報告がありますが、そのうち90%以上が未治療だと言われています。
一度障害された視神経は元には戻らないことから、早期発見・早期治療が非常に重要になります。
当院の緑内障の検査
緑内障の診断や点眼治療の効果判定、緑内障の進行の有無などを判断するために様々な検査を行います。
眼圧測定
眼球の内圧は、房水という液体によって保たれています。眼圧測定では、この眼球の内圧を測定します。
正常値は10~21mmHgであり、治療では眼圧を下げることが基本となりますが、眼圧が正常でありながら視神経の障害が進んで行くこともあります。これを正常眼圧緑内障と呼び、日本人によく見られます。そのため、眼圧測定だけでなく、網膜・血管・視神経乳頭の異常の有無を調べる眼底検査が不可欠です。
角膜厚測定
角膜の厚さを調べる検査です。
眼圧測定の結果は角膜の厚みに影響されるため、必要に応じてこの検査を行います。
隅角検査(ぐうかくけんさ)
眼圧を調節している房水の排出口について調べる検査です。
急性(閉塞隅角)緑内障を起こしやすい隅角の狭いタイプであるかどうか、その程度などが分かります。また、緑内障のレーザー治療の必要性の判断にも役立ちます。
眼底検査
視神経乳頭が白くなり、陥凹がある場合には、緑内障を疑います。ただし、視神経乳頭の陥凹は強度近視でも認められるため、視野検査、眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査、隅角検査などの結果とあわせて、総合的に診断することが大切になります。
視野測定
緑内障の進行の程度を調べる検査です。
半年に1度、定期的に検査を行い、進行の程度を把握します。
光干渉断層計(OCT)
近年その重要性に注目が集まっている検査です。
ごく初期の緑内障であっても、短時間で非侵襲的な検査による発見が可能です。
当院の緑内障治療
緑内障で失った視野をもとに戻すことはできません。したがって、緑内障の治療目的は病気の進行をできるだけ緩やかにさせることです。
薬物療法
緑内障の基本となる治療です。
現在、さまざまな効果が期待できる点眼薬が登場しています。緑内障のタイプや重症度、眼圧に応じて、お一人おひとりに合った処方を行います。
眼圧を下げる内服薬を使用することもあります。
レーザー治療
虹彩に小さな孔をあけて房水の流れを変える、閉塞隅角緑内障に対する治療です。閉塞隅角緑内障では、突然強い目の痛みに襲われ(急性緑内障発作)、ひと晩で失明に至るということがあります。
手術治療
薬物療法、レーザー治療で十分な効果を得られない場合には、手術を行います。
低侵襲(ていしんしゅう)
緑内障手術
(MIGS(ミグス))
近年、患者様の負担を軽減するために、低侵襲緑内障手術が注目されています。これまでの緑内障手術と比べ、目に負担の少ない緑内障手術の方法をまとめて低侵襲緑内障手術といいます。小さく切開して手術を行うので、手術時間が短い、合併症が少ない、術後の回復が早いなどの利点があります。
低侵襲緑内障手術は、白内障手術と同時に行うことも可能な、10分程度の短時間で完了する手術です。従来の手術に比べて、目の負担が少なく、術後の眼圧低下や点眼数の削減などが期待できます。
当院では、以下の3つの低侵襲緑内障手術を行っています。
◎iStent(アイステント)を用いた眼内ドレーン挿入術
目の中の房水の排出口である線維柱帯に非常に小さな器具(iStent)を挿入することで、房水流出の改善ならびに眼圧低下を目指します。
◎マイクロフックを用いた線維柱帯切開術
線維柱帯を切開することで、房水の流出抵抗を減少させます。それにより眼圧低下が期待できる術式です。線維柱帯がしっかり切開されれば、必ず出血(前房出血)が起こるので、術後数日間は霞んで見えにくくなりますが、ほとんどが数日で回復します。
◎プリザーフロマイクロ
シャント挿入術
プリザーフロマイクロシャント挿入術は、小さなチューブ状のインプラント(デバイス)を目の中に入れ、そこから房水を排出させて眼圧を下げる新しい手術です(図1)。手術時間は20~25分程度。麻酔により手術中の痛みはほとんどありませんが、手術直後、ゴロゴロするような違和感を感じることもありません。
この手術によって眼圧は平均10㎜Hg台前半に下がり、使っていた緑内障の点眼薬を大幅に減らすことも可能です。
日常生活で気をつけること
- 医師の指示をお守りください。また、無理のない、規則正しい生活習慣を心がけてください。
- 処方薬は、用法・用量を守って正しくお使いください。
- ほとんどの緑内障において、症状は緩やかに進行していきます。定期的にご来院いただき、検査を受けるようにしてください。
- 処方薬の使用、手術によって副作用が出ることがあります。目の異常、身体の異常を感じた時には、すぐに当院にご連絡ください。
大切な目を守るために
緑内障は、40歳以上の20人に1人に見られる、比較的身近な目の病気です。一方で、その進行が緩やかであることから、全体のうちの90%以上が未治療であると言われています。
この中には、受診はしたけれどなんらかのご理由で治療を行っていない人、そして症状に気づかず受診さえしていない人がいると思われます。
緑内障は、中途失明の原因の第1位にあります。できるだけ早く発見し、治療を開始することが大切です。「特に症状はない」と思われている方も、特に40歳になってからは、年に1度は眼科で定期検診を受け、緑内障を含めた眼科疾患の早期発見に努めましょう。